ネクストリンク代表 大和田渉ロングインタビュー
近年では「ネット炎上」という言葉が定着して久しい時代。
いつ頃から炎上という認識が広まっていったのでしょうか?
その歴史について、ネクストリンク代表取締役の大和田渉さんに、ネット炎上の歴史について、詳しく話をうかがいました。
ネクストリンクプロフィール:
2006年設立のネクストリンクは、2009年より誹謗中傷対策サービスをスタート。
述べ53,187件(2020年12月時点)のインターネットの風評被害・誹謗中傷の解決をサポート。
風評被害・誹謗中傷対策の専門チームとして歴史が長く、マスコミ掲載も多数。
現在も日々発生する炎上事象をウォッチング、ネットリスクを中心とした情報を収集したネットリスクJPを運営中。
炎上事例収集数は述べ3,283件(2022年6月時点)と、常に最新の炎上事象の変化と傾向を把握しており、業界内で稀有の存在となっています。
近年では「ネット炎上」という言葉が定着して久しいですが、いつ頃から炎上という認識が広まっていったのでしょうか。
今回はその歴史についてお伺いできればと思います。
今日もよろしくお願いいたします。
まず、何がきっかけで「ネット炎上」が周知されるようになったのでしょうか?
大和田
インターネットの普及の歴史とともに、炎上が生まれるまでの流れがあります。
元々はパソコン通信や早い段階でインターネットを利用している方と言うのは不特定多数のユーザーではなく、
業務上必要だったり趣味の中でも高額な投資をして機材をそろえるわけです。
従って、特定少数の限定的なユーザーが利用していました。
その結果、誰が誰を攻撃するなどは、匿名であったとしても類推できたり、実際に実名を名乗っていたりしていたわけです。
ですので、その当時(大体1990年中盤までの事を指しています。)には炎上自体もあまり起こるような事はなかったと考えています。
それが、1995年にはwindows95が発売され、回線環境が整い一般ユーザーも使いやすくなった1999~2002年位から、
掲示板等への荒らし行為や誹謗中傷などが起こるようになってきました。
この段階では炎上と一般化するような頃ではないかもしれませんね。
そして、2003年頃からCGMサービス(ブログなど)が一斉に増えてきて、ブログのコメントを荒らしたりブログを掲示板で晒したり、
ブログで誰かを批判したりなどなど、徐々に今でいう炎上に近づいてきます。
質問者
ターニングポイントは、一般ユーザーが参入してきた1995年頃、ということなのですね。
大和田
そうですね。
それが第一陣です。
しかし、そのころはまだネットの利用方法も当然ながらウェブサービスがあまり一般に普及していませんから、
今でいう炎上する経路がありません。
2000年前後でハードと回線の環境が整ったと。
そこから、ウェブサービスが増えていき炎上する準備が整ってきたという感じですね。
そして、2007年にはiphone、2008年にはtwitterとFacebookが日本に現れました。
最近でいうネット炎上自体が周知され始めたのは2008年以降でしょうね。
実際に今と同じように起こり始めたのは、ブログサービスが増え始めた2003年以降だと考えています。
質問者
PCが無くても簡単にインターネットにアクセスできる環境が生まれた段階ですね。
あとはブログ・SNSの登場ですか。
2000年以前は、まだ炎上と呼べるほどの事態が起こるまでの環境が整ってなかったということなのですね。
何か、きっかけとなったような、印象的な事件などはありますか?
大和田
炎上のきっかけですか。
まず、何が一番初めなのかと言うところは気になりますが、正直分かりませんね。
質問者
では、話は少し変わるのですが、「実名で批判する人もいた」と先ほどおっしゃっていましたが、
当時は自分を名乗って批判することも多かったのでしょうか?
大和田
ハードが普及する前は、パソコン自体が当然高額なものでした。
そして、インターネットを利用する事もとても敷居が高かったわけです。
その中で利用されている方、例えば大学の研究者の方や企業の担当者の方など、(だけではありません)特定の方が利用していたわけですが、
ハンドルネームを使うにせよ自分の身分を明かすケースが往々にあったわけです。
と言うよりは、分かっちゃうという方が正しいのかもしれませんね。
ですので、実名で批判をしていたわけではなく、実名を名乗っていた又は人物を類推する事が出来た中で、
何か文句を言うとなると、ほぼ実名に近いた形で批判をする結果となっていたという事です。
質問者
それって、使っている本人たちはもちろん分かっているんですよね?
インターネットの中でも、ほぼ自分の身分は明かされたようなものだ…ということですね。
もしそうであれば、炎上が起こらなかったことも、また納得します。
匿名だからこそ、多少のことでも躍起になって批判することができるような気がします。
大和田
炎上ではなく、議論は行われていたでしょうね。
批判や否定する事はあっても、単に攻撃する炎上とは違います。
質問者
そうですね。炎上ではなく議論になっているような気がします。
ここ15年くらいで、インターネットの利用者数やウェブサービスも増えたことにより、若干無法地帯のような環境になっていることが炎上を呼び起こしてるかもしれませんね。
勉強になりました!
どうもありがとうございました。
どんなに健全な企業でも、どんなに社内にてコンプライアンス研修を行っている企業でも、ネット上で風評被害・誹謗中傷に晒される危険性はゼロではありません。
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